基本的に、麹の種類が同じであればつくり方は共通ですが、醸造法や期間によってでき上がりが変わるため、銘柄によって微妙に製法が異なります。以下が主なみその銘柄ごとの違いです。
●白みそ(米みそ・白甘)
醸造面から分類すると、糖化型、短期熟成型に属します。糖化型とは、麹の酵素作用によってでんぷんが糖化し、あまみ成分に変わるものを指します。米は精白度を高くし、大豆は大粒で脱皮したものを使用。米麹も胞子の着生しない若麹を用います。大豆は蒸さずに煮ますが、これは主として着色させないためです。煮た大豆は煮汁を取り去って熱いうちに米麹と塩を混合し、桶に詰め、品温が急激に変化しないように保温して1~2週間熟成させます。熟成の温度が高いので、酵母や乳酸菌は働きません。
●江戸甘みそ(米みそ・赤色甘口)
米は普通のみそと同じように麹にします。蒸した大豆を蒸気吹き抜け後7~8時間炊き、保温して翌日まで放置します。この間に蒸し大豆は十分にやわらかくなるとともに、著しく光沢を有し、褐色に変わって特有の芳香を放ちます。これにより、貯蔵性も向上します。仕込みは白みそとほぼ同じですが、熟成期間は夏季で10日くらい、冬季で1ヵ月くらいです。白みそと同じで、酵母や乳酸菌の発酵は見られません。
●仙台みそ(米みそ・赤色辛口)
大豆は蒸して冷却した後、麹と塩を混ぜ合わせ、天然醸造で少なくとも10ヵ月以上熟成させます。これによって、大豆のたんぱく質は十分に加水分解されてうまみを出し、酵母や乳酸菌の発酵も完全となり、香味が生まれます。こうして塩分が比較的多いにもかかわらず、塩味とうまみのバランスがとれた塩馴れしたみそとなります。
●信州みそ(米みそ・淡色辛口)
通常、みそは長期間かけて醸造すると、赤褐色に着色します。そのため、淡色みそでは、醸造の全工程を通じて着色を最小限にとどめるようにします。淡色の信州みそは原料の大豆も蒸しあがり明度が高く、かつ黄色の鮮やかなものを選択し、できる限り丁寧に洗浄します。さらに浸漬や蒸煮方法などを工夫したり、着色成分や着色促進物質などを除去したりと、みその管理工程においても色が着かないよう配慮します。
●越後みそ(米みそ・赤色辛口)
越後みその特徴は、麹粒の浮いた粒みそにあります。まず、麹粒を残すために、精白した丸米を用います。米麹は塩切り麹にせず、チョッパーを通した蒸煮大豆と混合します。蒸煮大豆を用いるため、赤色みそといっても、着色は比較的淡色に近くなるのです。一見米粒が残っているように見えますが、米のでんぷんなどの主成分はほとんど糖化してあまみ成分となっています。
●麦みそ(淡色および赤色、甘口、辛口)
九州や西日本では裸麦が、関東では大麦が主として使用されます。一般的に大豆に対する麹の割合が同等もしくは2倍と高く、中には大豆を全く使わないものもあるほどです。九州地方のものは比較的熟成期間が短く、甘口で淡色です。一方、麹が少なく長期間熟成を経た麦みそは辛口で赤色となり、関東地方で多く見られます。
●豆みそ(赤褐色辛口)
製麹法や仕込み、熟成に独特な特徴があります。普通の豆みそは、みそ玉をつくるときに直径19mm程度の穴から蒸煮大豆を押し出しますが、中にはみそ玉を握りこぶしくらいの大きさにする銘柄もあります。みそ玉が大きいと酵素の働きが悪くなるので、それを補うために仕込み用の水を少なくし(42~43%くらい)、固く仕込みます。さらに重石を多くすることで(仕込み物の重量の80%)、食塩の浸透を促すとともに、酸化の進行を抑えます。その後、少なくとも二夏以上をかけ、天然条件でじっくりと熟成させます。豆みそは酵素による分解が主で、酵母や乳酸菌による発酵度が少ないのが特徴です。そのため、たんぱく質の分解成分が多く、味が濃厚で独特の香気を持ちます。色は濃く、わずかに渋味と苦味があります。